■乳歯期における反対咬合の治療
鳥山 栄(たんぽぽ小児歯科)
乳歯期に(治療可能な年令《当院は3才》)上顎前歯の咬合関係を変える事により将来反対咬合に移行する事を未然に防ぎ、その結果、矯正装置を使わずに咬合関係を改善する簡単な方法を考案し、その結果及び経過症例の報告をする。
症例
- (3才)反対咬合
を一度にCrownFormにて前歯被蓋を行う。その1週間後に を続けて行う。ほぼ1ヶ月以内に臼歯が咬合する。
- 反対咬合は
をCrownFormにて側方運動の抑制を行うと正中がもどり、交叉の改善が起こり経過観察とする。
- 乳歯列の反対咬合から永久歯への移行で永久歯の一部を床型の弾線装置を用い叢生を伴う症例の改善。(2症例)
- (1) T.S. (H16.12.16生) ♀ 歯性反対咬合
-
H20.6.10 反対咬合 (3才)
-
H20.6.27
CF 削合
-
H20.9.29
破折修理
-
H21.9.17 経過観察
- H.K. (H15.2.17生) ♂ 下顎前歯叢生を伴う反対咬合
-
H18.7.18
同時CF
-
H18.11.28 斜面板の形態
-
H18.12.7 臼歯の咬合改善
-
H19.2.13 下顎叢生治癒
-
H19.6.5.
破折 改善
-
H19.11.22
側方交叉咬合 CFにて改善中
- (2) I.T. (H9.12.13生) ♀ 顎の変位を伴う交叉咬合
-
H14.12.14 作業側左側変位
-
H15.1.11
CF正中移動
-
H15.3.1
CFで 側方運動調整
-
H16.6.26
萌出左側 臼歯部交叉
-
H17.6.11
萌出
-
H18.6.3
削合で2 2 の前方萌出を促す
-
H19.2.17
の改善
-
H19.8.28
脱落
-
H21.10.24 自然治癒の咬合誘導
- (3) 乳歯反対咬合から長期における治療で床装置を用いた症例
K.T. (H8.9.5.) ♂ 乳歯反対咬合から 反対咬合の移行症例
-
H14.1.11
-
H14.1.24 CF修復
-
H15.10.18
反対咬合
萌出スペース不足
-
H16.2.7 チンキャップ使用
外傷性咬合
-
H16.3.13 床装置に移行
-
H16.8.7 義歯の臼歯部を 徐々に削合
-
H16.9.13
被蓋改善
-
H16.2.14 床装置除去
-
H17.3.12
萌出
-
H17.12.10 臼歯部は乳歯
-
H21.10.3 永久歯交換
- K.T. (H10.2.22.) ♀ 乳歯反対咬合から
口蓋側転移の症例
-
H13.7.7
-
H13.7.14 CF修復
-
H14.10.29
-
H15.1.18 被蓋が強い傾向にある(遺伝)
-
H16.6.7 咬合の深いものは遺伝で下顎角が小さい
-
H17.9.30
萌出
-
H18.6.3
口蓋側萌出
-
H18.10.14 床装置装着
-
H18.12.16 顎位挙上のためアゴの疼痛を訴える
-
H19.2.17
前方移動
考察
上顎前歯部の劣成長を開放し下顎骨の前方への成長を抑制し、あくまでも永久歯列への咬合誘導をより自然な形で導けるものと思われる。方法はカリエスの治療に使用するCFにて歯軸の傾斜を用いて斜面板の形式をとる。対象は歯性・骨性・遺伝性も含めて可能である。
これらの治療はあくまでも乳歯列で、しかも3才という年令で行う事がより重要でましてやカリエスの治療と同一線上に位置している為、容易に可能である。
また、咬合関係においては顎関節において自然にルチアの軸を使用した時の様に中心位の方向へ移行するのではないかと思われる。
将来、成長が終わった子供達の中心位と中心咬合位の一致やずれがあるのか、これからの研究課題にしてみたいと思う。
まとめ
日常の診療行為としている為、来院した患者のほぼ全てに行う。3才という年齢を基準にして、2才半でも齲歯の治療を伴う場合には治療が可能である。矯正という行為ではなく、あくまでも自然形態に移行する為の咬合誘導である。顔貌の変化は一目瞭然でこれも小児の最大の特徴といえる。これらはあくまでも自然治療を目的としている事から、仮に床装置への移行があっても軽度で済む。本格矯正への移行は叢生が主で骨格性への移行も未然に防止できると思われる。
2009.11.15 小児歯科学会 中国 四国地方会 ケースプレゼンテーション
|